家づくり家づくりの「知っ得」情報1

今、家を建てる意味

良質な住宅ストックを持つ

日本の住宅は、欧米に比べ極めて短い周期で住宅の建て替え(スクラップ&ビルド)が頻繁に行われ、良質な住宅ストックが形成されていません。それは日本と欧米の住宅の位置付けの違いとして、日本では住宅の性能は個人の嗜好の問題として考えられているのに対し、欧米では住宅は社会のストックと考えている方が多いということです。「今は自分の家でも子供の代には他人に売るかもしれない、今は自分が使うとしても建物は社会的ストックだ」という感覚が欧米人にあるということです。

その背景には、地本主義経済(土地の評価価格が高い)のため、「建物は土地のおまけ」といわれていた日本では、建物の品質や居住性能に対し共通認識が無かったことなどがあります。

今後エネルギーコストが上昇していく時代、労働人口が減少する中、頻繁に建て替えを繰り返す(スクラップ&ビルド)ライフスタイルを続けることができるでしょうか? 欧米並みにはいかなくても、耐久性のある社会資本になる住宅を造っていかなければ建設需要を賄いきれなくなるでしょう。

【図】平成20年 住宅ストック約5000万戸の耐震性(推計)
【図】平成20年 住宅ストック約5000万戸の断熱性能

「造っては壊す」フロー消費型社会から「良いものを造って、きちんと手入れして、長く大切に使う」ストック型社会への転換が急務

基本性能の費用をケチらず将来の負担を大きく減らす

実際に建物を造るとなれば、お金がかかることが増えます。あれも欲しい、これも欲しいと積み上げていくと、ローンを借入限度一杯まで借りても予算が足りないこともあるでしょう。私は「やめられるものはみんなやめましょう」と言って予算を削減します。

家の基本性能を決める構造体、防水、断熱、サッシなどの基本的な資材は良いものを使いますが、間仕切壁を減らし、内装はできる限り簡略化し、設備機器も基本性能を備えたものに絞り込みます。

こうして造った建物は、いつまで経ってもなかなか傷みません。普通の家なら壊される頃でも、内装に手を加え設備機器を交換すれば、新築と変わらない性能を取り戻します。今は100%満足できなくても、将来お金が貯まれば気に入ったように直せます。今は大事なところにお金を使いましょう。

反対に、基本性能にかかるお金を削ったとすると、

  • 冷暖房費が増える
  • 温度ムラが増え、結露やカビの発生が増える
  • 建物の修繕の必要な箇所が増え、耐久年数が短かくなる

など、自分にかかってくる将来の負担が大きくなるばかりです。